総Xの短い文よせあつめ01/別軸なので繋がりはありません

Take1.


 「お前が女だったら」も「俺が女だったら」もありえない想像で、クソみたいな事象だとこの身を以て一度に知った。

 現実感がなさすぎる。
しかし歩いていて違和感しかない視線の低さも刀を握るのに不便なほどパンパンに膨れた丸い指も、胸から下がる重い脂肪の塊もすべては悪夢のようでいて実際俺に襲いかかった災難の象徴だ。性別とカロリーになんの関連があるのか、俺は一体誰に掴みかかって問い質せばいいんだ。



Take2.


 畳にごろりと横になった沖田は筋も骨も目立たない、白くなだらかなふくらはぎを上にして泳ぐように足をパタパタと振った。
「あーあ、俺まで女にされてなけりゃ土方さんだけでも元に戻れたかもしれないのになぁ」
 退屈そうな顔で意味深なことを言い、残念でしたねと思ってもないだろう言葉を宙に放り投げる。
「どういう意味だコラ」
「お姫様の呪いは王子様のキスで解けるって相場が決まってやすから」
「ウイルス兵器って言ってんだろーが! あとお前は王子様じゃなくてドS皇子なだけだから!」
「ま、アンタもお姫様ってナリじゃないですしねぇ……子豚ちゃん?」
「ヤメロォォォ!!一瞬で全身鳥肌立ったわ!!」
「豚なのに鳥肌……」
「もう黙っとけお前!」
 くだらない応酬は続く。もしも沖田だけ男のままだったら、すっかり姿を変えてしまった土方に躊躇いなく口づけただろうか。たとえそれで元の体に戻れなくても。

(考えるのも馬鹿馬鹿しいな)

 そういえば蛙になってしまった王子を元に戻したのは姫の口づけだったか暴力だったか。
ちいさな娘が憧れるような「お姫様」じみた姿の沖田を一瞥し、ぶるっと二の腕を震わせたあと土方は、お伽噺に造詣などないのだからとすべてにおいて考えることを放棄した。


[2016.05.03かぶき超大集会25ペーパー]