総Xの短い文よせあつめ02/別軸なので繋がりはありません
Take3.
(何で俺がこんなこと……)
「うまそうですがねィ」
「それ慰めになんねーから」
腕を引っ張られふかふかのベッド乗り上げる。短い首からタイを抜き取られ、少しだけ息がしやすくなった。
「明日は俺が髪結ってやりましょうか。昔みたいなひとつのやつ」
「勘弁しろよ」
まだ働き始めたところだが、豚呼ばわりされ、丸焼き寸前までいった女――これについては主に総悟のせいだが――がキャバクラで婦警のコスプレなんてどう考えても趣味が悪すぎる。おまけにミニスカポリスだ。
「物好きはこの世にたくさん居やすからねェ」
「そんな特殊性癖の野郎に好かれても嬉しかねーよ」
「アレ〜?ホントにィ〜〜?」
「その喋り方やめろ!」
自分のことと言いたいのだろうか。そんなことをいえば物好きなのは俺も同じで、男の時分からとっくにお互い様だ。好いている、と遠回しに言われていることにどんな顔をすればいいか考えあぐねそっぽを向いた。すると細い指で力強くあごを掴んできたかと思えば総悟は正面からずずいと覗き込んできて、もとから大きめの瞳が俺の目の前で更に零れそうなカーブを描いて光を散らす。そうなれば俺も対抗して睨むように見返してしまう。
「……まあ俺の客も大概変態だらけだから安心して下せェ」
「何の安心だよ!?」
しょうもなくてどうしようもない。結局のところお似合いなのだ。揃いの性別で何も産めない。だからあるものを取り返して護るだけの二人は来るべき戦いに備えて眠る。
男に戻れば血塗れのまま高揚に身をまかせ、きっと獣のように交わるだろう。元が野生動物なのだから、一刻も早く家畜の体から解放されたい。
Take4.
今の沖田はというと、事の発端の日、万事屋たちとのやり取りで使っていたような女言葉が似合う少女だ。教団が撤退してからはもはや女らしさなど不要と判断したのか、以前と変わらぬ振る舞いに戻っている。それだというのに声も形も知らない女のようで土方には少なからず戸惑いがあった。
(――知ってる女のようだとも、到底思えねえが)
煙草を喫みたいと思うが起き上がることの億劫さが勝る。何せ今の土方の身体は重くて重くて仕方ないのだ。自業自得だということにされているから文句も言えない。男に戻ったときこのカロリーはどこへ消えるのか、いや、そもそも本当に消えてくれるのか?一度吹き出してしまったものが果たして引っ込んでくれるのか……。
考えると段になった厚い腹の肉の奥からキリキリとした痛みがやってくることが分かっている土方は気を紛らわすため今度こそ横になって目を閉じた。沖田がやってきたら打ち上げられたトドのようだと言って囃し立てそうな光景だろう。土方は思いながら寝返りを打つ。
(……死んでも言えねえな)
似ても似つかなくて安心する。とは、死んでも言えない。
[2016.05.03かぶき超大集会25ペーパー]